株式会社トレーナーズラボ 代表取締役 小川達也さん 

小川達也さん:大学卒業後、22歳でスポーツジムの社員として就職。自身の所属していた店舗でパーソナルトレーナー事業を立ち上げ、各店舗への展開に尽力。その後38歳の時に兼ねてからの目標であったトレーナーとしての独立を果たす。数年後に縁あって発達障害児向けの水泳教室も開講することとなり、その後はパーソナルトレーナー事業と水泳教室事業を両軸に運営。2022年12月にトレーナーズラボ株式会社を創業し、現在はトレーナーも継続しながら水泳教室事業を拡大中。プライベートではイタリアン・グレイハウンドを1匹飼っており、休日には奥様と海辺を散歩する日々。

近藤 私が小川さんのパーソナルトレーニングを受け始めてから、早いものでもう10年近くになりましたね。週1回1時間、トレーニングをしながら仕事の話を色々聞いてきましたが、驚くのはこの10年で小川さんの話に出てくるお客さんの顔ぶれが全然変わらないこと。正確に言うと、増えたお客さんはいても減ったお客さんはいないですよね。今日はそんな小川さんが普段は敢えて言葉にしない、でも胸のうちにある色んなことを引き出したいと思いますので、よろしくお願いします!

インタビュー前半の今回は、パーソナルトレーナー事業中心に聞いていきます。まずはトレーナーとしてのスタートから現在に至るまでの歴史を教えてください。

小川さん もう10年も経つんですね!インタビューみたいなかしこまった場はあまり経験がないですけど、何かお役に立てることがあればという気持ちで話しますね。

僕がパーソナルトレーナーという仕事を意識したのは、23歳頃。アメリカの雑誌のTarsanに、あるトレーナーが自宅の1階部分をジムにして、そこにお客さんが次々とやってきて順にトレーニングをする、みたいな話が掲載されていて。その頃日本にはそういう職業がなかったので「そんなビジネスがあるのか、自分もやってみたい」と思ったのが始まりです。

当時勤めていたスポーツジムでは「膝が痛い」「肩が痛い」というちょっと調子悪そうなお客さんに対して個別にストレッチをしてあげると、上司から「依怙贔屓したらダメだろ!」と怒られたりしてましたけど(笑)、数年後にはそのジムでもパーソナルトレーニングの定期コースを作ることになったんです。

めちゃくちゃ需要があって、毎月倍々に売上が上がっていくんですよ。ただ、当時いたカリスマトレーナーみたいな人は結構お客さんを選んでましたね。若くてモチベーションが高い人のほうが効果が身体に現れやすいんですよね。なので、“モチベーションが高くない人はお断り”みたいな風潮がありました。だけどお客さんの中には「運動が嫌いだから、誰かに頼みたい」「自分でやれないから来てる」そんな人たちが結構いたんですよね。

元々僕は「会社は5年で辞めてパーソナルトレーナーとして独立しよう」という考えもあったので、とにかく自分のお客さん増やそうと思い、運動嫌いの困ってる人たちを進んで担当しました。結局、マッサージとか病院は対処療法なので、その場では楽になるかもしれないけどその人の身体自体はなかなか変わらないんですよね。でもジムで筋トレやストレッチをすることで、柔軟性が向上したり筋力がついたりする。そうすると痛みのコントロールができたり、痛みが消えたり、徐々に改善されていきました。

お客さんも効果を実感してくれて、継続的に通ってくれる。目標どおり5年で独立した後も、顧客層は大きくは変わっていないです。メインは身体がどこか調子悪い人。お客さんは30代から90代までいますけど、そのうち8割が50代以上ですね。

近藤 パーソナルトレーニングの内容や効果はもちろんですけど、小川さんはそれに加えて「これは仕事の範囲を超えてますよね?」ってことをすごく色々やってくれる印象です。お客さんとホノルルマラソン一緒に走ったり、お客さんの家でご飯まで作ったりされてましたよね。何故そこまでやるんですか?

小川さん やっぱり、シンプルにその人の為だから。結局困っている人の役に立ちたいっていう思いがあるんですよね。スポーツクラブの社員時代、あるおじいちゃんに「休み休みしか歩けなくなって、ジムへは行けなくなった」と言われたことがありました。その時に「それなら俺が行きますよ」って言いたいけど言えない、そんな思いを社員の時はずっと堪えてきたんですね。今はフリーになって、相手の立場を考えた時に必要だと思うことをやれるようになったんです。

歩けなくなった方のところに自ら出向いて訪問型パーソナルトレーニングを始めたり、ご主人を亡くして落ち込んでいたお客さんに「僕が訪問しますから、昼飯作ってください」って提案したこともあります。料理を作るのは張り合いになると思ったんですよね。メニューを考えて買い物をして、段取りを考えながら作る。誰かのために作るとなるとちょっと頑張るじゃないですか。ご本人の食生活にとっても良いなと思って。

それに、こういう訪問型トレーニングを早くからやっていたことはコロナ禍で役立ちました。ジムに行くのは怖いというお客さんのトレーニングを訪問型に変えたり、状況に応じて別の形を模索するということを常にやっていたからか、オンライントレーニングに着手したのも早かったと思います。お陰で、コロナ禍でも仕事をある程度キープできたのは幸いでした。

近藤 私も出産後に子連れでジムには行けないので、住んでいたマンションの共有ラウンジまで小川さんに来てもらってトレーニングしていましたよね!懐かしいです。こんな風にたくさんの方の身体を長年みてきた小川さんが考える「健やかに過ごすために大事なこと」は何でしょうか?

小川さん 夢中になれるものを探すというか、見つけることじゃないでしょうか。それは勉強でも運動でも何でもいいと思うんですけど。例えば、うちの妻の場合はそれが犬でした。犬を飼ったことで、活気が出て若返りましたね(笑)

お客さんだと、例えばゴルフが上手になりたい人が海外の情報なんかを色々調べ始めて「アメリカでは凄く筋トレしてる」「色んな競技の練習方法をゴルフに取り入れている」などの情報を得ると、ゴルフが上手になりたいその一心でめちゃくちゃ筋トレしたり、運動の幅が広がったこともあります。あとは最近だと、マラソンに出たいっていう80歳の方の目標のために、多摩川の土手を42.195Km一緒にウォーキングしたりもしましたね。やりたいと思ってたけどやれなかったことを「ここ一発やってみよう!」とその人が思った時に、手伝える存在でありたいですね。

若いうちは、夢中になる対象は仕事で良いと思うんですよ。だけど仕事が一段落した時、ワーカホリックな人達ほど急にやることなくなってだんだん元気がなくなってしまう。年齢を重ねると新しいことをやる勇気というものが中々出ないと思うんですね。なのでやりたいこと、釣りでもいいし、何かの研究でもいいし、ジョギングでもいいし、仕事以外の何かが50代ぐらいまでに見つかると、年齢を重ねても夢中になれるんじゃないでしょうか。

近藤 何か夢中になれるものを見つける…フィジカルとメンタルはやはり繋がっているんだなと感じました。たくさんの方をみてきた小川さんの言葉なので、説得力がありますね!

次回のインタビュー後半では、もうひとつの事業である発達障害児向け水泳教室運営についてのお話を伺いたいと思います。こちらも想いと工夫の詰まった事業のお話なので、楽しみにしています。今日はありがとうございました!

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PROFILE 近藤有希

フェリス女学院高校、東京大学文学部卒業。大手通信会社を経て現在は外資系金融機関勤務。仕事やプライベートを通じて出逢った様々な人の人生に触れる中で、その人の"A面"だけでなく"B面"を知ることの面白さを実感し、本インタビューサイトb-sideを設立。2児の母として子育てもしつつ、大好きな仕事や、ワイン・ホームパーティ・ダイビングなどの趣味も継続。自分の姿を見た子供たちに「人生って自由で楽しいんだ!」と思ってもらうことが目標。