濱部雅伸さん:学生時代は野球一筋だったが、様々な偶然も重なりダイビングの世界へ。野球人として培った熱さは変わらず、現在はその情熱をダイビングショップOceanTribeの経営に注いでいる。東京・自由が丘に構えるショップからは毎日その日に一番魅力的なスポットへのダイビングツアーが開催され、ダイビングを楽しめることはもちろん、親しみやすいスタッフや立ち寄りやすい店構えが好評でリピーターも多い。

近藤:前回はOcean Tribeというお店をどうしていきたいかについて、マサさんの想いをお聞きしました。そのお店作りに欠かせないのが、お店で働くダイビングインストラクターの皆さんだと思います。いつもまるで家族のように仲が良いですよね。今日はマサさんから見た皆さんについて、色々聞かせてください。

まずは採用についてですが、どの方も最初は初めましての出会いから採用に至ると思うのですが、何を基準に採用していますか?また育成はどんなことを意識してされているのでしょうか?

マサさん:まず採用基準は、人の目を見て話せる人。大きい笑顔で笑える人。嘘がない人。ライセンスを持っているかやダイビング経験が何本以上あるかよりも、やっぱりこういう人として基本的なところが大事だと思ってます。さすがにオープンウォーターしか持ってない人を雇う余裕はないんですけど…昔の僕みたいな人ですね(笑)。ダイブマスターくらい持っていると可能性あるかなと思います。(注:オープンウォーター、ダイブマスターはそれぞれダイビングライセンスの段階。)

あと嬉しいのは、うちはお客さんからスタッフになる人が多いんですよね。最初は一緒に潜っていて、通い続けてくれる過程で店番を手伝ってもらいながらライセンスのランクアップもしてもらい、ダイブマスターやインストラクターの段階まで行った後にもし転職の希望があるんだったらそのままスタッフとして採用する、という感じで。

面接しても、やっぱり一回二回の”点”で会ったくらいじゃお互い分からない。でもお客さんだとお付き合いが”線”で続いてるから、お互いに人となりを理解してる中でそういう話になれば、採用としても失敗は少ないかなと思ってます。

育成については前回話したようにマニュアルはないんですけど、「お客さんのことをちゃんと見ているか」という話は結構します。例えば人が笑っているところでちゃんと笑える人であってほしいし、人が痛がっているときにその痛みを分かる人であってほしいし、お客さんは本当に喜んでいるのかどうか、そういう喜怒哀楽に対してちゃんと正しく理解できる・反応できるようになってほしいですよね。それができない時というのはちゃんとお客さんのことを見ていない時だろうから、「やっぱり違ったんじゃない?」とか「もっといい方法あるんじゃないの?」なんて話は結構します。

始めたばっかりだともちろんインプットすることも多いし、説明しなきゃいけないこともたくさんある。その上で喜怒哀楽を理解できる人になってほしい、ということだから、それもなかなか大変だとは思うんですよね。運転もしなきゃいけない、ネイチャーガイドとしてガイドもしなきゃいけない。お客さんは楽しいことにお金を払っているわけだから楽しんでもらうことも大前提。でもインストラクターとしては安全管理も相当シビアにやらなきゃという緊張感もあるわけで。なので入ったばかりのスタッフなんかはよく泣いてますよ。自信がない、できる気がしないって。最初は不安もありますよね。

なのでもちろんインストラクターとしてのスキルも一定水準満たせるようフォローしていきます。ダイブマスターになったとしても、トラブルを未然に防いだり水中でストレス抱えてる人を見過ごさないなど、実践も含めてトレーニングが必要なんですよね。海に一緒に潜るまでの間にお客さんから「この人は大丈夫そうだな」って思ってもらわないといけないですからね。

近藤:そうですよね。わたしたちが楽しく潜るその裏側には、いろんな準備や配慮がありますよね。それがあるから極度の怖がりのわたしでも、Ocean Tribeではこうして潜り続けられるんだと思います。そんな風にいつもお客さんと過ごしている皆さんですが、スタッフの方たちだけで過ごす時間っていうのもあるんですか?

マサさん:第一月曜日がお店の定休日で、その日はわりとみんなで過ごしてますね。みんなでお昼ご飯食べて、いつも海への送迎に使っている車を洗ったり、倉庫で干してるお客さんの機材片付けたりして、そっからまた必ずみんなでご飯。そういう時どんな話をしているかというと…僕お酒好きで飲むと全然覚えてないんですよね(笑)。覚えてないんですけど、お客さんの話とかスタッフの話とか、ダイビングや仕事にまつわる色んな面白い話をしていつも笑ってます。だから周りの人には「本当にスタッフ仲いいですよね」って言われますね。

あとは結構喧嘩もします。キャリアの長い短いがある中で喧嘩できるっていうのは僕は良いかなと思っていて。「自分が良かれと思ったこと」と「違う良かれ」がスタッフ間に出てきた時に「それどうなの?」っていう話はしてほしい。自分と違う価値観の人の気持ちを理解するっていうのは、本当に大事だと思うんですよね。

近藤:喧嘩できるというのは、それだけ信頼の土台があるということですもんね。喧嘩できてはじめてお互いちゃんと理解できる感じ、わかります。わたし昔好きだったドラマで仕事に熱い主人公が言っていた「一緒に働くってことは、一緒に生きることと一緒だろ!!」という台詞が大好きで。一緒に働くことになったのは偶然の産物かもしれないですけど、仕事をしながら一緒に生きる仲間になっていけたら、人生における仕事の意味も変わってくるし、きっと良い仕事できますよね。

最後に、マサさんから見た、それぞれのスタッフの方の良いところと今後期待することを教えてください。このサイトはいろんな方が見てくれているのでスタッフの皆さんを知らない方も多いんですが、敢えて皆さんをいつもの呼び名のまま、掲載させて頂けたらと思っています。

マサさん:じゃあ長く一緒にいる順に行きますね。

マイさんは、みんなにとってかすがい的存在ですね。お客さんとスタッフ、スタッフ同士、ホントあらゆる事のクッションになってくれてます。夫婦なんで一緒に住んでるとイライラすることも多々あるんですけど(笑)、喧嘩した時自分はひきずるんだけどマイさんは全然ひきずらない。こっちがまだイライラしててもあっけらかんと朗らかに話しかけられると、なんか自分が湿った奴に思えてきて。これからも末長くよろしくという気持ちですね。

マサシは、不器用なんだけど、とにかくめちゃくちゃ優しくて。仕事も一つのことに対して丁寧さや思い入れの強さがピカイチです。でも丁寧にやってるから仕事量がめちゃくちゃ少ない(笑)。彼はOcean Tribeの番頭(店長)なわけだから、今後はダイビングへの熱意とかどうやったらもっと良いお店になるかっていうのを、今まであるもの+αで自分のカラーをどんどん出していってほしいですね。

ミカはね、ダイビングがなきゃダメな体なんだよね(笑)。だから一番ダイビングインストラクターとして生きていくことに対して地に足がついてるし腹が座ってます。いい意味でも悪い意味でも、脇道に逸れないというか。休みの日もリサーチで一人でいろんなところ潜ってますよ。とにかく一人が好きだしストイック。僕としてはもうちょっとみんなに対して感情を、自分をさらけ出してほしいなって思っちゃいますけどね。僕が気を遣っちゃうんで…。

タマは、自信があってどんどん色んなことをやってみたい「ザ・若者」って感じです。正義感が強くてこだわりも強い。だから自分の信じたものをお客さんに対して「こう喜んでもらおう!」と力にできるのがいいですね。お客さんも付き合いやすいと思います。ただ時々「間違ってることをなんでそんな自信ありげに言うの?」みたいな一面もあります(笑)。なのでこれからもっと色んな価値観に触れてほしいですね。

最後にスズカ。25歳だからまだまだ子供みたいな感じですよね。でも人の目をまっすぐ見ることができて、みんなが笑ってるときに大きく笑うことができて、そのままのなごみキャラでいてもらいたいです。今はインストラクターっぽく振る舞おうとしなくて良いと思う。お客さんの方が人生経験豊富なんだから、自分の意見は伝えながらも、謙虚さを大事にしてほしいなと。自信なくてうまくいかないことも多くてたまに泣いてるんだけど、そのまま真っ直ぐ努力を続けていってほしいです。

やっぱりお客さんもそうですけど、何よりスタッフのみんなから「Ocean Tribeがあってよかった」と思ってもらえるお店にしたいですね。そしてみんなも飽きずにモチベーションをキープして、遊び心も忘れずに健康でいられたら、きっと面白いお店になれるんじゃないかなという気がします。お客さんに支えられながら個性を生かして、伸びていってくれたらいいなと思います。

近藤:ありがとうございます。わたしは皆さんを知っているので、こうやって一人ずつへのコメントを聞くとやっぱりマサさんの愛情を感じます。前回、今回とお話を聞かせいただき、とても良い時間になりました。きっとこれからもOcean Tribeのファンが増えていきますね!この度はお時間いただきありがとうございました。

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INTERVIE BY
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PROFILE 近藤有希

フェリス女学院高校、東京大学文学部卒業。大手通信会社を経て現在は外資系金融機関勤務。仕事やプライベートを通じて出逢った様々な人の人生に触れる中で、その人の"A面"だけでなく"B面"を知ることの面白さを実感し、本インタビューサイトb-sideを設立。2児の母として子育てもしつつ、大好きな仕事や、ワイン・ホームパーティ・ダイビングなどの趣味も継続。自分の姿を見た子供たちに「人生って自由で楽しいんだ!」と思ってもらうことが目標。