草ヶ谷昌彦さん:学生時代より先代である父が創業した株式会社ブルックリンの革製品の職人を志し、現在は二代目代表として会社を経営。表参道にあるBROOKLYN MUSEUMには職人として立ち続けており、オーダー品のコンサルティング等も直接請け負っている。

草ヶ谷さん:家族についてあまり外向けに話したことがないので、こっちのほうが緊張しますね…(笑)妻との出会いは仕事です。僕が19で会社に入った時、妻は当時会社が手掛けていたレディースのセレクトショップのディレクターとして働いていたんです。一緒に働いたのは1年ほどで、その後妻は一度会社から離れたりもしているんですが、昔の仲間で飲みに行くことが度々あって。そこに自然と「彼女も呼ぼうか」となるような存在でした。

結婚したのは僕が25の時でしたが、決め手は「一緒にいるとお互い成長できるな、良い形でパートナーになれるな」と思えたことです。僕が「趣味は仕事!」というぐらい仕事が好きなこともわかってくれていましたし、2人で仕事の話をするのはとても自然なことで。そんな時間の積み重ねの中で、お互いの存在をパートナーとして捉えるようになりました。

結婚から1年ほどして子供が産まれてからは、妻が子供のこと、家のことを引き受けてくれ、仕事に集中させてくれました。会社における僕の立ち位置も理解してくれて「あなたがやらなきゃいけないんだから」と背中を押してくれたんです。

他のお父さんと違って土日休みというわけでもないし、朝は子供が起きる前に家を出て夜は寝た後帰ってくる。そんな僕を支えてくれたことはもちろん有り難かったんですが、それに加えて妻が子供にかけてくれた言葉に、本当に感謝していて。「パパが一生懸命お仕事頑張ってるから、毎日美味しいご飯が食べられるんだよ。学校に行けるんだよ。」そんな風に子供に伝えてくれていたんですよね。

おかげで、今は息子も14歳になり思春期真っ只中ですが、兄と弟のような会話ができる関係になりました。小さい頃の子育てにはほとんど参加できなかったけれど、自分が仕事をしている背中を息子に見せるということは意識してきました。そこに妻の前向きな声掛けが加わったからこそ、息子との今があると思います。本当に有難いですね。

草ヶ谷さん:小さい時には一緒に旅行したりできなかったんですが、今は息子もある程度大きくなったので、年末に2人でスノボに行くようになりました。新幹線に乗って雪山に行き、一緒に滑る。話すのは他愛もない話で、最近学校どう?とか、中学で流行っている曲は何かとか、彼女できた?とか。友達みたいな感じですね。ゆっくり一緒にいる機会は年末年始ぐらいなので、そんな時の会話では「勉強してるのか」とか言わないようにしています。

最近は息子もファッションに興味を持ち始めて、少し前には僕の服を借りて履いたりすることもあったんですよ。ついに背を追い越されちゃったのでもう今は同じサイズ履けなくなってしまったんですが、そんなことしてくれるのは嬉しいですよね。時代が変わっていく中で若い子の感性は僕も知りたいし、ファッションについて息子と話ができるのは面白いです。

草ヶ谷さん:僕が19の時から働いているので、あと4-5年で息子が同じようなタイミングを迎えると思うと、色々考えますね。

息子は小さい頃から大人びていたところがあって…。彼が5歳ぐらいの時に夫婦で言い合いをしてしまったことがあったんですよ。そしたらその様子を見ていた息子に「パパはパパのままで良いんだよ。ママはママのままで良いんだよ。」と言われて。ビックリしたと同時に、すごいなぁ、ある意味自分より大人だなと。

どんな選択でも尊重したいと思っています。もし継ぐことを選択するのならば社長業は僕より向いてるんじゃないかなと思ったりします。小さい頃から人を巻き込んだり仲間を作るのがとても得意でした。僕と違って職人タイプでは絶対にないので、チームを作ってそのチームを活かしていく、そんなスタイルでやっていってくれたら嬉しいなと思います。

>>STORY08へ

>>STORY10へ

INTERVIE BY
KONDO

PROFILE 近藤有希

フェリス女学院高校、東京大学文学部卒業。大手通信会社を経て現在は外資系金融機関勤務。仕事やプライベートを通じて出逢った様々な人の人生に触れる中で、その人の"A面"だけでなく"B面"を知ることの面白さを実感し、本インタビューサイトb-sideを設立。2児の母として子育てもしつつ、大好きな仕事や、ワイン・ホームパーティ・ダイビングなどの趣味も継続。自分の姿を見た子供たちに「人生って自由で楽しいんだ!」と思ってもらうことが目標。